世界の果てのぶっ壊れるような邂逅ver.0

彼女に出会ったのは、会社の近くのコンビニに昼食用のパンを買いにいったときのことだ。

白く整った顔立ちをした彼女は、パリッとした白いブラウスに、プリーツの効いた紺のスカート、黒い革靴を合わせていた。彼女を美少女と呼ぶには、自分の美しさを重く背負いすぎているように感じた。その細い身体から、鮮明な服装と対照的な、濃い陰影を落としていた。あの白々しい蛍光灯がつけっぱなしの、コンビニの中でである。

それは世界の果てのぶっ壊れるような邂逅だった。

それから、飛躍するが、僕らはデートを重ねることになった。そこに至る手続きは退屈だから割愛する。あのコンビニの中で、僕が彼女に声をかけただけだ。

ああ、デート、デート、デート。

僕は自意識過剰で、デートという俗な響きに耐えらなかった。デートがわからなかった。いや、デートをわかりたくなかった。ただ、彼女のことは好きだった。掛け値なしに。だからデートをせざるを得なかった。

ああ、デート、デート、デート。

いつだったか、2人でデートをして、代々木公園で終電を逃したときの話だ。僕らはぐるぐると、公園の周りを歩き始めた。その間一言も交わさずに。やがてどちらかが疲れ果て、ちりぢりになるまで、歩き続けた。そんな不器用なデートしか僕らにはできなかった。

そんな日々を過ごしているうちに、彼女から家族の都合で海外に移住することを聞かされた。その頃僕らは、デートの仕方があまりに下手で、消耗しきっていた。そうした背景もあり、これが節目と、別れることに決めたのだ。

そこからが大変だった。彼女の美しさにぶっ壊された僕は、唐突な別れから日常生活が困難になるほど弱ってしまった。あの下手くそで不器用なデートは、コンビニでぶっ壊れた僕の対症療法だったのだと今更気がついた。精神科の医者に診断書をでっちあげてもらい、会社を三カ月ほど休職して、どうにか社会復帰することはできた。

今も僕はコンビニで彼女にぶっ壊されたまんまだ。あのコンビニは世界の果てで、それはぶっ壊れるような邂逅だった。